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【寸法】繰越(くりこし)

着物の寸法の繰越(くりこし)とは、衣文を抜いて着た時に裾線が前後で狂わないようにするためのものです。

体型・年齢・好みによっても変わりますが、
以前は、繰越5分が一般的で、現在は7分が増えていると感じます。
一般的な方であれば、繰越は多くても1寸が最大でしょう。
(1寸を指定する方は稀です)

●繰越と着付けー着物(長着)・羽織・コート・襦袢ー●

ー着物(長着)の場合ー
衣文を抜いて着ようとすると、前身頃が後身頃に引きずられます。
すると前身頃の裾線が上がり、後ろ身頃の裾線が下がります。
着物(長着)の場合ならば、その誤差を「おはしょり」で調整して裾線を調整できます。

ー羽織・コートの場合ー
羽織やコートでは、その誤差を「おはしょり」で調整することができません。
例えば5分の着物(長着)でも多めに衣文を抜く方ならば、羽織・コートの繰越は長着の衣文の抜き方に合わせ多くする必要があります。そうしないと、前身頃の裾だけが上がってしまうからです。
そうした事態を防ぐために、前裾を長めに仕立てる「前下がり」という仕立方もあります。
(雨コートでは、前裾を踏まないように前下がりは原則付けません)
特に雨コートなどのように裾線が足元までの長さでは、着物(長着)を着て計測することが望ましいです。
ご本人の衣文の抜き具合に合わせて、コートの繰越を決められるからです。

ー襦袢の場合ー
襦袢の場合も同様です。
例えば5分の着物(長着)でも多めに衣文を抜く方ならば、身長で割り出して襦袢を仕立てても、
後身頃が必要以上に後ろにまわって、襦袢が長く感じてしまう事態になります。

襦袢や羽織・コートなど「おはしょり」のない物の場合は、繰越と共に衣文を多めに抜くのかどうかを仕立てる側に伝えることが望ましいでしょう。



【寸法】抱き巾

着物の抱き巾は、胸あたりの前幅のことです。
仕立てるところにもよりますが、通常、抱き巾は前幅より狭い設定です。
狭くといっても「前幅-4分(約2cm)」とすることが多く、
この抱き巾だけ単独で狭くするということが、和裁では出来ません。
抱き巾は、後巾、特に肩幅との兼ね合いがあるからです。

逆にいうと、抱き巾の問題を考えるなら、肩幅のことも考えることが必要です。
ここでいう抱き巾の問題とは、着物の衿合わせの着にくさです。
「なんとなく衿がガバガバして着にくい」という問題は、抱き巾が原因の事が多いです。
例えば、
身幅は細いのに、手足が長く裄が大きい(肩幅が大きい)という体型の方に発生しやすい問題です。

そのような場合は、肩幅を見直すことを考慮するといいと思います。
具体的には、裄寸法自体を小さくするか、
または、肩幅の代わりに袖幅を広くするなどの対策があります。
若い方の振袖・または浴衣など、上にコート・羽織をお召しになることがないなら、
そうした対策も有効だと思います。



【寸法】褄下(衿下)

褄下(つました)または衿下(えりした)は、着物の衿先から裾までの長さです。
この寸法の算出方法は、着物の身丈÷2+5分、が基準です。
4尺の身丈なら、2尺5分となります。
(基準値なので、お好みで変動します)

この褄下寸法ですが、着付けに影響を及ぼすこともあります。
それは、腰紐の位置、または、おはしょりの量と関係します。

例えば褄下が短いと、おはしょりの下から衿先が沢山出てしまいます。
逆に褄下が長すぎると、腰紐が衿先に上手くかからず、衿合わせの時着にくい感じになります。
以上の事からもわかるとおり、褄下の問題は身丈とも関係してきます。

ただ頂き物の着物などでは、身丈が出ないこともありますので
褄下だけの問題を、褄下だけで直すことは難しい場合もあります。
「なんとなく着にくい着物」は、部分直しではなく、全部を自分寸法にした途端、
あっさり解決することもあります。



【寸法】身幅(後幅・肩幅)

着物の身幅は、胴回りの一番太いところを基準に決めます。
個人差もあるので、ヒップの人もいれば、ウエストだったり、太ももだったりします。

着物には、女並み(おんななみ)と呼ばれる標準寸法がありますが、
それによると以下の通りです。
・後幅 7寸5分
・前幅 6寸
和裁の教科書によれば、ヒップが84-90cmとなってますが、
ここは好みによるところもあります。

●茶道をされている方の身幅●
お茶をされている方は、胴回りの寸法より大きめに仕立てることが多いです。
その理由は、正座をしている時間が長く、膝部分で着物がはだけてしまわないためです。
全体的に、後巾も前幅も大きくする場合もあれば、前幅だけ大きくする場合、
通常のように抱き巾を狭めない場合など、個人の好みによるところもあります。

●スマート仕立て●
この仕立て方法は、腰部分から裾にかけて、身幅を少しだけ狭くする仕立て方です。
裾つぼまりに着易くなるという理由で選ぶ方もいらっしゃいます。



【寸法】裄(肩幅と袖幅)

着物のお直しの中で多いうちの一つが、裄寸法です。
裄(ゆき)は、肩幅と袖幅を足したものです。

仕立てる為に裄を測ることがありますが、この測り方もお店によってまちまちです。
基本的には、首の付け根のグリグリから、手首の付け根のグリグリまでですが、
以下の状態によって、長さが激変します。
(因みに以下では、下に行くほど長くなります)
①手を肩と同じ高さで伸ばした状態
②手を45度くらい下げた状態
③手を体を並行にした状態

①で測ることはまずないので、②か③かです。
洋服の感覚で考えると、③が良いようにも思いますが、
着物の場合、③で仕立てると、ちょっとした弱点があります。
それは、以下の二つ。
・肩幅が大きくなることで、身幅も大きくなり、胸あたりが体より大きくなってしまい着にくい。
・袖幅が大きくなることで、コートや羽織を作る際、選べる反物の種類が少なくなる。

例えば、羽織物の不要な浴衣・成人式の振袖なら 大きめの裄でも良いと思います。

余談ですが、日本舞踊の女形では、手を③のような位置にもってくることは
まずありません。
だいたい、袖の中で肘を曲げ帯の上部を押さえるような姿勢をとっていますね。
とはいえ現在の生活で日本舞踊をするように動くわけにもいきません。
ただ着物とは、「気を付け」の姿勢が基本ではないことを理解することがあってもいいかなと、
個人的には思います。

●襦袢・羽織・コートの袖幅・肩幅●
・襦袢の袖幅・・・・着物(長着)より-2分
・羽織の袖幅・・・・着物(長着)より+1分
・コートの袖幅・・・羽織袖幅より+1分
(肩幅は全てにおいて同寸です)